農地を相続したときに確認すべきこと|農地法の基本とよくある誤解
結論から言うと、農地を相続で取得すること自体に農業委員会の許可は必要ありません。 ただし「届出」の義務があり、さらにその農地を売る・転用するとなると、今度は「許可」が必要になります。 「相続した実家に農地が付いていた」というケースは非常に多く、 ここを正しく理解しておかないと処分の段取りを間違えてしまいます。本記事で基本を整理します。
農地を「相続で取得した」ときにまず必要な手続き(届出)
相続によって農地の権利を取得した場合、その取得自体は農地法上の許可の対象外です。 ただし、農地の取得を知った時から概ね10か月以内に、その農地がある市区町村の農業委員会へ届出をする義務があります。 この届出を怠ると、10万円以下の過料の対象となる可能性があるとされています。
農地を売却・転用するときの許可(農地法3条・4条・5条)
相続した農地を「農地のまま」第三者に売却する場合は農地法3条の許可、 「農地以外の用途(宅地等)に転用」する場合は4条許可、 「転用を前提に第三者へ売却」する場合は5条許可が必要になります。 いずれも農業委員会(面積等によっては都道府県知事)の許可が必要で、無許可のまま契約をしても効力が生じません。
当室では、この許可申請にかかる農業委員会とのやり取りや必要書類の準備についても、 コンサルティング契約の中で調整を行い、窓口をひとつにまとめてご案内しています。
買い手が見つかりにくかった理由と、令和5年の規制緩和
これまで農地の売買では、買う側にも「一定面積以上の農地をすでに経営している」という下限面積要件が課されていました。 この要件があるために、家庭菜園程度の目的で農地を買いたい人や、新規就農者が小規模な農地を取得することが難しく、 結果として売り手側から見ると「買い手が見つからない」状態が長く続いていました。
この下限面積要件は令和5年(2023年)4月に廃止されており、以前よりも幅広い層が農地取得の許可を得やすくなっています。 とはいえ、農地としての需要そのものが乏しいエリアも多く、転用や近隣の宅地需要とあわせた検討が現実的な選択肢になるケースが少なくありません。
空き家に農地が付いているケースの注意点
実家じまいのご相談では、母屋(空き家)と隣接する畑や田んぼがセットで相続されているケースが頻繁にあります。 国土交通省と農林水産省が連携して整理した手引きでも、こうした「農地付き空き家」は制度の狭間になりやすいと指摘されています。 建物部分は空き家対策、農地部分は農地法という異なる制度が同時にかかわるため、 どちらか一方だけを進めようとすると手続きが止まってしまうことがあります。
当室では、建物(空き家)と農地をセットで現地調査し、それぞれの処分方針(売却・転用・国庫帰属の活用等)を あわせてご提案する形で対応しています。
まとめ
農地の相続は「取得=届出」「売却・転用=許可」という2段階で理解するのがポイントです。 令和5年の規制緩和により以前より買い手を見つけやすくなってはいますが、 農地特有の手続きは複雑なため、実家の建物部分とあわせて早めに専門家へご相談いただくことをおすすめします。